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京葉にサードウェーブコーヒーがやってきた

今年の3月から京葉CCのホットコーヒーが美味しくなりました。 「サードウェーブコーヒー」という新しい波がやってきています。サードウェーブの定義はそれほど明確ではないようですが、「スペシャルティコーヒー」を使って丁寧に抽出したコーヒーを指すと僕は思っています。スペシャルティコーヒーの定義は日本スペシャルティコーヒー協会のサイトによると次のとおりです。 生産国においての栽培管理、収穫、生産処理、選別そして品質管理が適正になされ、欠点豆の混入が極めて少ない生豆であること。 そして、適切な輸送と保管により、劣化のない状態で焙煎されて、欠点豆の混入が見られない焙煎豆であること。 さらに、適切な抽出がなされ、カップに生産地の特徴的な素晴らしい風味特性が表現されることが求められる。 この波がどこから始まったのか専門家ではないのでよくわりませんが、サンフランシスコなどアメリカ西海岸はかなり熱いことになってます。昨年、Sightglass CoffeeやBlue Bottle Coffeeなど何軒かコーヒーショップ巡りをしてきましたが、日本のThe Coffee ShopやMocha Cafeなどもコダワリの感じるコーヒーを提供しています。最近では丸山珈琲が西麻布にやってきましたし、フランスのCoutumeが青山に店を出しました。東京のコーヒーシーンもどんどん変わってきています。 抽出方法もドリップだけではなく、フレンチプレスやエスプレッソ、サイフォンなど多様です。The Coffee Shopの富ヶ谷店や丸山珈琲の西麻布店、Coutume青山店では「スチームパンク」という面白い抽出方法も楽しめます。個人的にはフレンチプレスがコーヒーの旨味が強く出るので好きですが、高温を維持して抽出できるサイフォンやスチームパンクを推す人も多いようです。 京葉CCではThe Coffee Shopからシングルオリジンの豆を仕入れています。スペシャルティコーヒーの性質上、数量がそれほど確保できないこともあって、毎月豆の種類が変わっていく予定です。抽出方法は従来通りペーパーフィルターでのドリップですが、フレンチプレスなどに比べて旨味は落ちるもののすっきりして非常に美味しいコーヒーを提供できていると思います。 スターバックスの登場以前は酸味の強いコーヒーが主流でしたが、コーヒー本来のもつ酸味というよりも酸化した酸味であったため、深煎りのスターバックスのコーヒーはすっきりとした苦味が新鮮でした。現在は酸化した酸味でもなく、コーヒーを焦がした苦味でもなく、コーヒーが持つ自然な酸味や旨味、あるいはそれらの味と調和のとれたほのかに焦がした苦味といった、バラエティ豊かな味を楽しめるだけのクオリティを持った豆(スペシャルティコーヒー)が流通しています。みなさんも是非サードウェーブコーヒーを京葉で楽しんでください。 P.S. 個人的には紅茶も大好きなので、紅茶ももっと拘って美味しいものを提供していけたら嬉しいと思っています。

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2014年の全米オープン、全米女子オープンはパインハースト

今年の全米オープンと全米女子オープンはパインハーストNo.2 で2週続きで開催されます。 ヘビーラフで有名な全米オープンですが、近年変化してきていますね。ラフはフェアウェイから離れるほど深くなるようにセッティングされるようになっています。昨年のメリオンではファーストカットを斜めに刈る専用の機械が開発されていました。 今年の開催コースであるパインハーストNo.2は数年前のBill Coore & Ben Crenshawによる大規模なレストアによってラフがなくなりました。パインハーストでの全米オープン開催は3度目になりますが、今回はどのようなトーナメントになるのか非常に興味深いです。しかも全米オープンの翌週にはそのまま全米女子オープンを開催するので、どうやってセッティングを変えてくるのかにも注目したいところです。 R&Aとともにルールを管理するUSGAは全米オープンをテストの場と捉えています。世界最高のプレーヤーが4日間でパープレーとなるコース、コースセッティング、クラブ、ボール等の設定の組み合わせを模索しているのです。その目標設定が一般のゴルファー全体にとって有益なことなのかはわかりませんが。個人的にはとっとと飛距離を抑える規制をボールかクラブにして欲しいところです。

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Mr. Tom Doak and the “Classics” その2

前回からの続きです。 ラフプランを受け取ったあと、我々は川奈へと向かいました。僕にとってはこの時が初めての川奈でしたが、トム・ドークはそれ以前にも(おそらく複数回)プレーしてます。川奈へ行くことになった理由はよくわからないのですが、コーディネートしてくれたマサ・ニシジマ氏がこのようなプランを組んでくれたのでした。 結論から言うと、トム・ドークと川奈を一緒にプレーしながら、それも泊まりでゴルフをするというのは至福の経験となりました。川奈ホテルのバーで僕とトム・ドーク、ブライアン、ニシジマ氏、眞利子氏の5人での語らいは何にも代えがたいものとなるでしょう。 ゴルファーなら誰でも自分の思うゴルフコースランキングがあるはずですが、このランキングは時と共に変わります。コースが改造されたり、新しいコースが加わったり、自分の考え方が変わったり。ドークはあちこちでドーク自身のランキングを聞かれているのですが、僕もその時点での彼のランキングが知りたくて僕も彼の現時点でのトップ12は何かを尋ねました。答えはもはや正確には覚えてないですが、パインバレー、セントアンドリュース、シネコックヒル、ナショナルゴルフリンクス、パインハーストNo.2、ミュアフィールド、サイプレスポイント、サンフランシスコ、サンドヒル、ロイヤルカウンティーダウン、ロイヤルメルボルン、メリオンあたりだったように思います。彼は順位をつけるのは好まないので、今挙げた順序は順位を表すものではありません。念の為。 僕にとってむしろ印象的だったのはランクインしなかったコースのほうでした。オーガスタナショナル、オークモント、ペブルビーチ、ウィングドフットなどは彼の好みではないようでした。 ちなみに、ドークは川奈が評価とは別に(といっても高く評価してますが)とても好きらしく、富士コースだけでなく大島コースもカートに乗って興奮して走りまわって見ていました。「こんなにダイナミックなコースはなかなかないよ!」と語っていて、一般的には評価が低い大島コースなだけに僕は興味深く聞いていました。川奈はアップダウンが結構きついので敬遠する人も多いですが、1番と5番の打ち下ろし以外は極端な高低差はないし、自然の地形を活かしたレイアウトは見事だと思いました。僕は特に7番ホールは見事なショートパー4で大好きです。 ドークの川奈への評価も聞きました。コーライグリーンはベントに変えるべきだし、16番ホールの有名なパー3の砲台グリーンはもっと下げたほうが良いだろうと言っていました。レイアウト(ルーティング)については満足しているようでした。そして、「もし川奈のリノベーションの依頼があったら引き受けるか?」という僕の問いに、しばらく沈黙して考え込んだ後「yes」と答えました。リーマン・ショック前の当時、彼のもとには毎月2件以上の新規設計依頼があったらしいですが、そういう状況も考慮した上での真剣な返答だったように思います。 ドークは有名設計家の中では圧倒的に来日回数の多い人だと思いますが、コース設計の歴史についてもかなりのオタクで、アリソンの設計思想や日本での活動にも非常に詳しい人です。世界中を旅して設計して回ったアリソンやマッケンジーに自分をなぞらえているようでもありました(奇しくもふたりともコルトのパートナーでしたね)。 そんなわけで、彼の考える川奈のリノベーションは彼のコースにすることではなく、アリソンの思想を蘇らせるものであることは間違いないでしょう。そういうコースのレストアもこれまで数多く請け負ってきた実績もあります。クリスタルダウンズなどはマッケンジーの設計ですが彼のレストアによって見事に蘇ったそうです。ドークのホームコースでもあります。 コルトやマッケンジーが活躍した1920年代前後はゴルフにおいてもゴールデン・エイジで現在ではその頃に設計されたコースをクラシックコースと呼びます。ドークはこのクラシックコースの設計思想を現代に蘇らせることを目標にしていることは、彼の会社の名前がルネッサンス・ゴルフであることからもよく分かります。(つづく)

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Mr. Tom Doak and the “Classics”

タイトルはJohn Hicksの ”Mr. Keynes and the ‘Classics’” からのパクリです。どうでもいいですね。はい。内容とは関係ありません(多分)。トム・ドークに設計を依頼するまでの経緯や、その後トム・ドークと交流を深める中で知った彼の考え方を備忘録として残しておくと同時に、多くの人と共有したいと思います。 きっかけはツーグリーンをいつかゴルフ本来の姿であるワングリーンにしたい、という先代の社長の思いにあります。その頃の僕はまだ若く、ゴルフが出来ればなんでもいい、ぐらいの認識だったので「へぇ、そういうもんか」という程度に受け止めていました。また僕の叔父は「いいコースは設計家で決まるんだ」と言っていて、それも「へぇ、そういうもんか」と思っていましたが、この二つのことは頭にこびりついて離れませんでした。 2005年に京葉初のプロトーナメントを開催することになり、その勉強としてアメリカのトーナメントを見学に行きました。この機会を利用してパインハーストNo.2をプレーしてきました。このコースは以前に広告で知っていてなんとなく記憶に残っていたので調べてみたらアメリカでもトップ10に入る名コースで、しかも同年に全米オープンを開催することを知り、是非行ってみたいと思ったのです。 実際にパインハーストをプレーしてみると、今までやってきたコースは一体何だったのか、と彼我の差のあまりの大きさにただただ驚くばかりでした。この衝撃の体験から、こういったものを作れるのは外国人の設計家しかいないと思うようになりました。外国人が日本庭園をいくら上手く作ってみても日本人が作るものには敵わないように、ゴルフコースは日本人では勝てないと思います。 調べてみると、当時一番有名だったのはトム・ファジオでした。実際パインハーストNo.8は彼の設計で、とても美しいコースで、No.4は改造、No.6は叔父で有名な設計家であったジョージ・ファジオとの共同設計でした。更に調べてみると、彼は子供と離れたくないからアメリカ大陸以外の仕事はしないと公言していることがわかりました。 他にはジャック・ニクラウス、トム・ワイスコフ、ビル・クーア&ベン・クレンショウなどいろいろな人がいましたが、当時の副支配人で(僕の知る限りで一番のゴルフオタクである)長沼秀明氏からトム・ドークの「ゴルフコースを解剖する」という本をもらいました。これが目からウロコの良本で、この本を書いた人のコースを見てみたい、と思うようになりました。能書きだけで、実際には大したことがないのはよくあることなので、全く期待していなかったのですが、2008年1月になって、ついにその機会が訪れたのです。 取引先の社長が声をかけてくれてオレゴンにあるトム・ドーク設計のパフィフィック・デューンズをプレーしに行くことになったのです。このコースも世界のトップ10ぐらいのコースで、実際行ってみるとこれが最近出来たコースなのか、という佇まいと風格、厳しさをもったコースで驚きました。ビル・クーア&ベン・クレンショウ設計のバンドン・トレイルも素晴らしいコースでした。 トム・ドークの本とコースを実際に見てみて「地形を活かした設計」の真の意味が分かるようになりました。どの設計者もこのことはセールストークとして言うんですが、普通の設計者の場合、実際には活かすどころかメッタ刺しに殺してる感じですね。元ある地形をブルドーザーでぶっ壊して人工的なマウンドの上にティーやグリーンを作っていくからです。 2008年2月、このオレゴン旅行に一緒に行った当時箱根CCのキーパーであった眞利子氏が17番ホールと18番ホールにバンカーを増設中だった京葉に米ゴルフ・マガジンのコースランキングのパネリストであったマサ・ニシジマ氏を連れてやってきてくれました。そこで何気なく「トム・ドークが改造を引き受けてくれないかなぁ?」とつぶやくようにいったところ、ニシジマ氏が「トムに聞いてみようか?高いよ(笑)」と冗談ぽく言うのであまりあてにはしていなかったのですがお願いしました。そうしたら、その次の日ぐらいには「改造は興味はないけど一応地形図だけ送ってもらって」というメールが転送されてきました。軽く衝撃を受けつつすぐに地形図のPDFを添付して返信するとすぐに返事が来ました。今度は様子が随分違っていて「短いほうのアウトコースは面白い地形をしてる。オーナーは距離とかPar72に拘るかな?」という前向きなものでした。彼の本やネットにある色々な書き物を読み漁っていて、彼の考え方はよくわかっていたし、共感していたので「距離やPar72には全く拘らないし、いまのレイアウトは無視して考えて欲しい」と伝えました。 そしてついに2008年7月にトム・ドークが右腕のブライアン・シュナイダーを連れて京葉にやってきたのです。本に載っていた写真は若く痩せていたのに、実物は結構太っていて本当に本人か本気で疑うほどでした。こりゃあ、一杯食わされたかな、と思いましたよ。 実際にはもちろんそんなことはなく正真正銘本人でした。早速現地に入って二日間ほどブライアンと二人で図面片手にコースの隅々を歩いて回っていました。図面でティーとグリーンの候補地のあたりをつけて実際にそのルートで歩いてみて、またクラブハウスに戻って別のプランを考えて実地で確認し、という作業の繰り返しでした。18ホールのティーとグリーンの位置をバランスよく決めるのは本当に一つのアートで、偉大なマエストロにしかできないワザだと思いました。無数にあるグリーンとティーの候補地の中から最良の18ホールを選び出す作業は誰もが解けるパズルではないですね。凡庸な設計家は数ホール印象的なものを選び出すのがせいぜいだし、逆に数ホール素晴らしいものにするのは比較的簡単なことです。 この作業を「ルーティング」と呼びますが、トム・ドークはパー4やパー5をどのような順番で並べるかなんてことは全く考えずに行います。結果的にパー3で始まっても構わないし、パー3やパー5が2つ続いても気にしません(実際にパシフィック・デューンズでは10番11番はパー3)。 こうして僕は京葉の改造計画のラフなプランを手にしたのでした。(つづく)

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キャディ

キャディはルールで認められたパートナーである。距離やライン、クラブ選択などに助言をすることが出来るのがパートナーであり、単にクラブを運ぶだけの存在ではない。それだけではなく、初心者の人にとってはゴルフのルールやマナーの手助けをしてくる存在であるし、また、18ホールの旅を楽しいものにしてくれる道連れでもある。 バブル崩壊以降、ゴルフ需要の減退により価格への下落圧力が強まり、より低価格でゴルフが出来るセルフプレーが普及してきた。それはそれで大変結構なことではあるが、キャディなしでプレーするといことは、キャディがやるべき仕事をプレーヤー自身がやらなければならない、ということである。そもそもディボット跡を埋め、グリーン上のボールマークを直し、バンカーをレーキがけするのはプレーヤーの仕事である。 個人的にはキャディがいるなら必ずキャディをつけるようにしている。その方が単純にゴルフが楽しい。 数年前、一人でスコットランドに行ってきた。エジンバラの東にあるノース・ベリックというコースを日本からインターネットで事前に予約し、キャディを頼んでおいた。プレーしたのは日曜日であった。 コースについてプロショップでチェックインし、スタートハウスでキャディを待つ。しばらくしておじさんがやってきた。ノース・ベリックは公営のゴルフコースであるが、そこをホームにするクラブが三つあるという。彼はそのうちの一つのクラブのメンバーだそうで、週末にはこうしてアルバイトでキャディをするそうだ。それはアルバイトというよりも観光客を案内するボランティアのようなものに近い感じだった。 その日、彼の子供たちはコースの脇にあるショートコースでゴルフをしているという。さらに小さい子供たちにはスタートハウスの向こうに大きなパターゴルフ場があって、そこで遊ぶそうだ。街全体がゴルフと共にある、そんな街だった。 結局一人でプレーしたのだが、キャディをしてくれたおじさんと二人で雑談しながら楽しく、気持よくゴルフができた。最終ホールは短いパー4で、ドライバーだとオーバーしてしまうが、グリーンの手前は溝になっていて、非常に面白いホールだった。右側の道路の向こうはすぐ街になっていて、車が止まっている。キャディのおじさんの車もそこに停めてあるという。ちょっとスライスすれば車か家に当たってしまう、そんな距離感。「あそこには打たないでくれよな」とおじさんが冗談をいった。 その日はそこそこ調子が良かった。けれど右は街だしワンオン出来る距離ということで力んでチョロってしまった。その日は日曜日で、クラブハウスの二階のパブに上がるとトム・ワトソンが全英オープンの優勝争いをしていた。

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風評被害を防ぐために 〜茨城県、栃木県の放射線量

東日本大震災が起きて以来、関東各地のゴルフ場の来場者が激減している(もちろん東北のゴルフ場は直接被災しており営業出来ていないところが多い) ((京葉CCでは3月の来場者数は対前年比約50%減で、特に震災後は90%近く減少した。))。一つは自粛ムードが理由で、もうひとつは余震や放射線の被曝への恐れが原因と思われる。特に後者については、栃木県や茨城県など福島県に隣接するでは深刻であろう。 余震はともかく、放射線についてはどれくらい恐れる必要があるのだろうか。人工放射線(レントゲンなど)の1年間の被曝量の目安は1ミリシーベルトとされているが、これはかなり保守的な設定で、1回のCTスキャンでの被曝量は約7ミリシーベルトである。また、一度の被曝量として健康に害が出るとされるのは100ミリシーベルトからで、250ミリシーベルトから白血球の減少が認められる数値ということになっている。また、日本での1年間の平均自然被曝量は1.5ミリシーベルトであり、世界的に見るとこれは少ないほうだ。イタリア、中国、インド、ノルウェイ、ブラジルなど4ミリシーベルト/年を超す国も存在している。 4月18日現在の茨城県各地の放射線量をみると、多いところで毎時0.3マイクロシーベルト(=0.0003ミリシーベルト)で、この量を半減期を無視して1年間浴びたとすると、$0.3\mu Sv \times 24 \times 365 = 2,628\mu Sv$、つまり約2.6ミリシーベルト/年であり、一日数時間浴びても全く問題のないレベルの放射線量である。同様に栃木県各地の放射線量をみると、多いところで毎時0.2マイクロシーベルトであり、さらに低い。風向きなどによっては、放射性物質がまとまって到達する可能性もあるが、現在では原子炉施設の爆発などその原因となる要素がないので大きく変化することはなさそうである。

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日本で「スループレー」は何故採用されない?

18ホールを長い休憩を挟まずにプレーすることを日本では「スループレー」と呼んでいて、「スループレー」することは日本では特殊なこととされる。この点についてゴルファーの希望を聞いてみると、殆どの人が「スループレー」の方が良い、という。多くのゴルファーが望んでいるのに日本ではそれが実現されない、もしくは廃れてしまったのは何故なのだろう?長期的な利益を最大化するという目的はゴルフクラブの形態を問わず同じはずで、ゴルファーの満足度を高める方法が採用されないのは不思議だ。今回はこのことについて考えてみたい。 2つの基本方式 ワンウェイ方式 「スループレー」には基本的に2つのやり方がある。まず全ての組を1番ホールからスタートさせるワンウェイ方式がある。この方式の場合、日が昇ってからスタートを開始し、18ホールのプレー時間分を日没時刻から引いた時間が最終スタートになる。例えば6時に日が出て、18時に日が沈み、プレーに4時間かかる場合は単純にいえば6時から14時までスタートできることになる。10分間隔でスタートするとすると、8時間あるので49組スタートできる計算だ。セントアンドリュースなど古いコースは10番ホールが遠いためワンウェイ方式を取らざるをえないことが多い。下にワンウェイ方式を図にした。 オレンジで塗られた部分が、1番ホールからスタートする組の時間を表していて、右側はそれらの組が10番ホールに来る時間を示している。グレーの部分はスタートする組はないものの、フロントナイン(アウトコース)またはバックナイン(インコース)をプレーしている組があることを示していて、白地は誰もプレーしていないことを示している。これを見ると、白地の部分はそれぞれの9ホールで2時間ずつあることがわかる。この面積が大きいほど、ゴルフコースが有効に活用されていないことになる。 ツーウェイ方式 さて、もう一つの方法は1番ホールと10番ホールから同時にスタートするツーウェイ方式であるが、この場合には午前組と午後組にスタート時間が分かれることになる。図で示すと次のようになる。 8時を午前組のトップスタートとして、10時が最終組になる。10時になると1番ホールには10番ホールから最初にスタートした組がやってくるので、10時から12時までは新たにスタートできる組はない。このため、午前組と午後組とに分かれるのである。この場合には白地の面積はそれぞれ2時間分で同じである。 変則ツーウェイ方式 最後に、現在関東地方で主流の休憩を挟んだ、変則ツーウェイ方式を図で示してみる。 8時にスタートした組が10時に9ホールを終えて1時間休憩するとその間午前中のスタート時間を増やすことができる。しかし、全体では白地の面積が各4時間と倍になっていて無駄が生じていることがわかる。 日照時間の影響 ここまでは日照時間が12時間、18ホールのプレー時間が4時間という想定で考えてきたが、日照時間は季節や緯度によっても変わるし、現在のプレー時間を4時間と想定することは現実的はない。想定するプレー時間が4時間よりも長くなる、ということは日照時間が短くなるということと同じなので、日照時間の変化についてのみ考えることにする。(日照が8時から16時までと仮定する) ワンウェイ方式では単純にスタート時間が短くなるだけで、ロス(白地の面積)は変わらない。 ツーウェイ方式では4時間日照時間が短くなると午後組が完全に消滅してしまう。日照時間の減少が想定プレー時間よりも短ければ、その分だけ午後組の枠を確保することができる。 これらに対して、途中休憩をとる変則ツーウェイ方式では、プレーヤーに休憩をとらせるという(プレーヤーにとっての)コストを代償として利用効率のロスを減少させることができる。 ここまでのまとめ 日本の時刻の基準は兵庫県にあり、それより東に位置する関東地方では時刻に対しての日没が早いので、生活リズムを基準とした日照時間が短い。このため1年のかなりの期間が変則ツーウェイ方式がゴルフコースにとっては効率的であり、その効率化の結果として価格を(そうでない場合に比べて)低く抑えることができるため、供給サイドであるゴルフコースにとってもプレーヤーにとってもメリットのある方法であったといえる。 さらに、関東地方のゴルフコースへの交通事情や1日の有効利用という観点から遅い時間のスタートに対する需要の低さも要因の一つとしてあげられるだろう。どれだけスタートの「枠」があったとしても、そこでプレーするプレーヤーがいなければその枠はないも同じだからである。 これらの考察から、プレーできる時期の日照時間が非常に長いスコットランドでワンウェイ方式が多く(古いコースが多いので必然的にワンウェイにならざるをえない場合も多いが)、アメリカではツーウェイが普及し、日本では変則ツーウェイが普及したのには日照時間(プレー時間も含めて)とアクセスの違いが大きな影響を与えたのではないかと推察される。 それでも「スループレー」を普及するために 日本、とくに関東地方では合理性が乏しいゆえに普及しなかった「スループレー」であるが、それを「スループレーは世界の標準であるのに、それをさせないゴルフコースに問題がある」というのは単なる精神論に過ぎないので、ここでは合理的な解決方法を考えていきたい。 まず考えられる当然の方法は、日照時間の長い時期にはワンウェイ方式なりツーウェイ方式を採用し、日照時間の短い時期には変則ツーウェイ方式を採用することである。日照時間が長いほどワンウェイ方式が合理的になるが、日本はワンウェイ方式が合理的になるほど日照時間が長い日はあまりないので、ツーウェイ方式が現実的な回答である。 実際にツーウェイ方式を採用するに当たっての問題点は、これまで変則ツーウェイ方式で午前中にプレーを開始する方法に慣れたプレーヤーが多い中、午後のスループレーに需要があまりない可能性があることである。通常プレーヤーが「スループレーのほうが良い」という場合には午前組でのプレーを想定していて、午後のプレーが普及しないとスループレーが成立しないことまでは考えていない。 これを解決するひとつの方法は、人気の低い午後スタートの料金を引き下げてインセンティブを与えることである。料金そのものは午後組への需要の強さによって決まるが、ツーウェイ方式を採用するかどうかは変則ツーウェイとの比較によって決まる。午後組への需要があまりに弱くて設定料金が低くなりすぎればスループレーは維持できなくなるであろう。

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世に用あり、餘に用なし

…自分には用がないのだらう。それを世に用なしと思ふのだ。よく考へてみると、いろいろなものゝ實用、實用といふ場合は、大槪これです。餘に用なしなんです。餘に用なしといつても、自分ではどんな恩惠を被つてゐるか知らない。間接に恩惠を被つてゐるのだが、それを自分が認識しないで、餘に用なしと思つてゐるのだ。だから實際は、餘に用なしでもないのだ。 —高木貞治「數學の實用性」 「生兵法は怪我の元」、「論語読みの論語知らず」、「論より証拠」、「机上の空論」など「理論」に対する反感は非常に根強いものがあるように思う。でも、人間誰しもが「理論」に基づいて判断しているんだよね。その「理論」が個人的な経験から導かれたものであるか、別の人達の間で積み上げられてきた知的営為の蓄積なのか、の違いがあるだけなんだ。 でも、ここに埋め難い溝が存在してる。自分が経験したことっていうのは非常に強烈なるインパクトを記憶に残すから、これこそが絶対であると錯覚しがちである一方、他人の論じるもので自分の経験外のものや、経験に反するものについてはどこか非現実感が漂うわけで、主観的評価が低くなってしまうことにもうなづける。 うなずけるとは言ったものの、このような「感覚」が一般的な社会通念となって反知性主義が蔓延すれば、社会の進歩が停滞することもまたかなり明らかだと思う。だから、知的営為の個人的な蓄積と社会的な蓄積とを較べた場合、社会的蓄積を優先させることが望ましい、って考えるのが妥当な線じゃなかろうか。 「こんなものは役に立たない」という言葉を口にしたくなったとき、それが「自分が役に立てられない」だけなのか、それとも「役に立てられる人が一人もいない」ということなのかをまず考えてみたらいいんじゃない?という話でした。

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