Monthly Archives: 4月 2010

パインハーストNo.2の改造—Lost Artの復活—

2014年に全米オープンと全米女子オープンが2週続きでパインハーストNo.2で開催される。パインハーストはドナルド・ロスの代表作であり、コースの脇に居を構えて30年(1907年から1936年まで)に渡って完成度を高め続けたコースである。 ランキングでもトップ10の常連コースであったが、近年評価を落としている。その理由は外部からは分かりようもないが、その100年にも及ぶ長い歴史の中でパインハーストNo.2はロスの理念を失ってしまったのである。 ロス自身はNo.2について次のように語っている。 Pinehurst Number Two is the kind of course where every bunker could be removed and you’d never know it. Bearing in mind that golf should be a pleasure and not a penance, it has always been my … Continue reading

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世に用あり、餘に用なし

…自分には用がないのだらう。それを世に用なしと思ふのだ。よく考へてみると、いろいろなものゝ實用、實用といふ場合は、大槪これです。餘に用なしなんです。餘に用なしといつても、自分ではどんな恩惠を被つてゐるか知らない。間接に恩惠を被つてゐるのだが、それを自分が認識しないで、餘に用なしと思つてゐるのだ。だから實際は、餘に用なしでもないのだ。 —高木貞治「數學の實用性」 「生兵法は怪我の元」、「論語読みの論語知らず」、「論より証拠」、「机上の空論」など「理論」に対する反感は非常に根強いものがあるように思う。でも、人間誰しもが「理論」に基づいて判断しているんだよね。その「理論」が個人的な経験から導かれたものであるか、別の人達の間で積み上げられてきた知的営為の蓄積なのか、の違いがあるだけなんだ。 でも、ここに埋め難い溝が存在してる。自分が経験したことっていうのは非常に強烈なるインパクトを記憶に残すから、これこそが絶対であると錯覚しがちである一方、他人の論じるもので自分の経験外のものや、経験に反するものについてはどこか非現実感が漂うわけで、主観的評価が低くなってしまうことにもうなづける。 うなずけるとは言ったものの、このような「感覚」が一般的な社会通念となって反知性主義が蔓延すれば、社会の進歩が停滞することもまたかなり明らかだと思う。だから、知的営為の個人的な蓄積と社会的な蓄積とを較べた場合、社会的蓄積を優先させることが望ましい、って考えるのが妥当な線じゃなかろうか。 「こんなものは役に立たない」という言葉を口にしたくなったとき、それが「自分が役に立てられない」だけなのか、それとも「役に立てられる人が一人もいない」ということなのかをまず考えてみたらいいんじゃない?という話でした。

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グリーンの更新作業

グリーンの更新作業とは、簡単にいえばグリーンを耕すことである。踏圧による物理的固結を解消することで透水性を回復させ、また土壌中に酸素を供給する目的で行う一連の作業である。 作業手順はおおまかに次の通り。まずコアリングを行う。次にグリーン上のコアをスイーパーで取り除く。そして目砂散布機で砂を撒く。撒いた砂を穴の中に落とすためにブラシをかける。使う機械の種類や台数にもよるが、この作業に丸一日かかる。 これと似た作業にトップドレッシングがあるが、これは砂をグリーン表面に撒くことが目的で、更新作業で撒く砂は穴に入れることが目的であり、これらはまったく別の作業と考えるべきだろう。 春先、入梅前、初秋の3回ほどこの作業を行うが、グリーンに穴が空いて凸凹になり、表面は砂だらけになるため、プレーヤーからは非常に評判が悪い。時期を上手く選べば1週間程度でかなり回復するため、クラブによっては更新作業を行うときに1週間クローズしてしまうところもある。 残念ながら、今のところ更新作業に変わる方法がないため、この作業はグリーンの健全な生育のために不可欠な作業であることをプレーヤーには理解して頂いて、我慢してもらうより他にない。 更新作業をしないとどうなるのか 更新作業の中でも特に重要なのか、コアリングである。これによって物理的に土壌を入れ替えることができる。グリーンの土壌はUSGAグリーンの時に解説した通り、砂にピートモスなどの土壌改良剤を混ぜたものであるが、経年によって芝生の刈りかすや死んだ古い根などの有機物が堆積していく。有機物は化学的に結合しやすく堆積していくことで土壌を固結させてしまう。これをコアリングによって部分的に砂100%に変換することで物理的に改善できる。さらに、砂は気相の割合が高いため土壌中の好気性微生物に酸素を供給することになり、微生物が土壌中の有機物を分解して無機物に変えてくれる。分解された無機物は栄養となって根から吸収されるか、水に流され排出される。 適切な管理をすればUSGAグリーンはかなりの長期にわたって使用可能であるが、その「適切な管理」とは、このように造成直後の土壌成分を維持するような管理のことなのである(当然使用する砂は造成時と同じものかUSGAのテスト時の同じスペックのものでなければならない)。 更新作業で注意したいいくつかの点 グリーンを維持する上で非常に重要な更新作業であるが、一連の作業で注意したい点がいくつかある。 まず、コアリングの機械の調整である。穴をあける刃がグリーンに対して真っすぐ垂直に刺さり、かつその刃がよく研がれていなければならない。斜めに入ったり、よく研がれていないと穴の淵が崩れやすくなり、砂が入りにくくなってしまう。 次に、グリーン上のコアを丁寧に除去しなければならない。特にグリーンの淵は段差があるためコアが残りやすいので丁寧にとる。コアが残ると穴を塞いでしまうだけでなく、踏みつぶされたコアの下の芝が死んでしまう。これでは何のための更新作業か、本末転倒となる。 第3点目は穴をあけて時を置かずにきっちり砂を入れることである。穴をあけた瞬間からその内側の根は空気にさらされ乾燥し始める。砂を入れる時間が遅れれば遅れるほど乾燥が進み根にダメージを与えてしまう。また、空けた穴をしっかり砂で充填して「砂の柱」を立てることも重要である。この砂の柱は透水や酸素供給のために重要な役割を果たすが、しっかり埋まっていないと有機物を多く含む壁面が崩れて透水性を低下させてしまし、不必要にグリーンが柔らかくなりボールマークの痕がつきやすくなる。 最後に、更新作業は土壌の改善にあるので、グリーンの表面に残った砂を取り除くとよい。表面の砂を取り除くことで芝の葉が露出し光合成を助ける。またボールの転がりも良くなるためプレーヤーにとっても望ましい。しかし、この作業は手間がかかる上にまだ実験段階であり、実際に行っているコースは限られている。

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